2004年08月

ドイツ人の武士の情け ・・

大変古い話で恐縮ですが 1 983 年 ドイツイーゲーメタル(金属労組) の週 35 時間労働獲得のためのストライキがあったときの ことです。

ドイツ最大の自動車用モーターメーカーである得意先B社より緊急の呼び出しがありました。この得意先は  Stuttgart から レンタカーで  40 分ぐらいのところにある工場で当然のことながら いつも こちらから工場に訪問しておりましたが この日ばかりは  Stuttgart の空港までその課長さんが出かけて来られ レストランで会談しました。

私たちはモーター用のフェライトマグネットを ドイツのライバルメーカーH社と半分づつ納入していましたが ドイツのH社がストライキのため納入が出来なくなったので工場のラインが止まりそうになった。従って納入を倍に増やせ そして 緊急を要するので 現在の在庫全部 と 今後納入するものは すべて 飛行機で送れ そして 具体的に いつ何個 送付するという計画書を 出せというお達しでした。

 この製品は 重さの割に単価が安いので 従来船で送付しておりました。

もし飛行機で送ると 飛行機便代が  製品の価格の2倍でしたので 買う方からみると 3倍の値段で 買うことになります。

 緊急にそのように手配し空輸を始めました。 1 ヶ月ほどたって こちらから出した 納入計画数を もっと前倒しするよう要求がありました。工場に連絡すると 国内の得意先に納入するのを削って そちらに仕向けない限り 前倒しは できない、日本の得意先の了解をとるので 来週の月曜になるまで 返事を待って欲しいとの ことでしたので その月曜まで 返事を待ってもらうことで 了解を得ました。

月曜になっても日本側から回答がないのでいらいらしていると 得意先B社から テレックスが来たので そのテレックスはてっきり 約束した月曜日の前倒し出荷の催促だと思い 一寸眺めただけで 電話で催促して 空輸を急ぎました。

 そのうちに 得意先より  どうして空輸したのだというお叱りの電話が 業務担当をしているドイツ人の女の子のところに入りびっくりしました。

 月曜にきたテレックスを取り出してよくみると
“ Die Lage hat sich entspannt. Sie brauchen die Sendung nicht par Luftfracht zu schicken. Wir werden sehr dankbar ,wenn Sie uns informieren könnten.
Wann und wieviel Stück schon per Luftfracht vershickt würde?

  「 事情が緩和した ので もう空輸の必要がありません。今までに いつ何個が すでに空輸されているのか連絡してください。」という意味でした。

  催促の返事をする日が月曜だったので 月曜にきたテレックスは てっきり 催促のテレックスだと早とちりしたことと  spannen という動詞が緊張する という意味だというのを知っていたのでテレックスをパッと見て  事情が緊迫してい る とカン違いをし何時何個空輸するのかという 催促のテレックだと思い込んだのでした。

しかしドイツ語が出来る人であれば ent— が頭につくと 反対に意味になることが容易にわかるのですが当時未だ 知りませんでした。

decken 覆う entdecken 覆いを取る→発見する

spannen 緊張する entspannen 緊張を緩める

waffe 兵器 entwaffen   武装解除する

通常はこの種の手配の仕事はドイツ人の女の子が担当し得意先からテレックスが入ると それを英語に直して日本の業務担当者に流す そして返事がきたら それをドイツ語に 直して得意先に返事をする というシステムでしたが  お得意さんの一大事だというのでその仕事を私が取り上げたところに問題がありました。

私が中途半端にドイツ語がわかったので 何の説明なしにそのテレックスを机の上においた。というのです。 私のドイツ語の読解力が足りないために 得意先に 3倍の値段で 売りつけたことになり大変なことになったと すぐ 得意先に飛んで行きました。

ところが課長さんは あなたの会社の協力で工場のラインが止まらなかったことに大変 感謝され、もし資材の調達が悪く工場のラインが止まったら首になるとのこと。 

 社員食堂でご馳走になり 二人で工場を出て 工場の周りのきれいな林の中で 2 時間ほど散歩したり休んだりしながら 小さい頃貧乏だったので 子供の頃からこの会社の徒弟として働いていることなど 彼の生い立ちから会社のことなど 私にわかるようにゆっくりと ドイツ語で 私がわからないところは英語で 話してくれました。そして最後にどのようにしてドイツ語を勉強しているのだと聞くので 毎週土曜に家庭教師の先生のところに通っているというと 週に 2 回にしなさいといわれ 空輸代金の支払いについては 確約がないまま 別れました。私の間違いなので 先方は法的には その空輸代金を払わなくとも良い立場にありますが それを支払ってもらわないと 私の社内の立場が大変微妙になるのです。「私がドイツ語が出来なくて間違いました 」と工場に頭を下げて 空輸代を負担してもらわなければなりません。そうこうしているうちに経理の方から こちらの請求書通り空輸代金を含めた全代金が振り込まれているという報告が来ました。

彼の武士の情けと 我々の協力がお役に立ってことで大変うれしく思いました。

戻る